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タパヌリ熱

"What do you know, pray, of Tapanuli fever?" said Sherlock Holmes. 音楽や本など、嘘や発見を書くブログ。旧ブログ http://ameblo.jp/baritsu/

塚本邦雄

波は神の手魚の流露いつの日も水晶の光濃き香の何か/塚本邦雄

波は神の手魚の流露いつの日も水晶の光濃き香の何か なみはかみのて/さかなのりゅうろ/いつのひも/すいしょうのひかり/こきかのなにか 塚本邦雄の晩年、大手術の後遺症で清澄な意識を失いつつあった日々に作られた歌だという。 塚本の歌としては異色の不…

ほほゑみに肖てはるかなれ霜月の火事の中なるピアノ一臺/塚本邦雄

ほほゑみに肖てはるかなれ霜月の火事の中なるピアノ一臺ほほえみに/にて はるかなれ/しもつきの/かじのなかなる/ピアノいちだい塚本邦雄しばらく短歌を読むことなど忘れさっていたのだが、仕事に追われる日々の鬱屈の中に、ふとこの歌が頭に浮かんだ。こ…

革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ/塚本邦雄

革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ かくめいか/さくしかに より/かかられて/すこしずつ えきか/してゆくぴあの 塚本邦雄 革命歌の作詞家がよりかかって、液状になるピアノ。 第一歌集『水葬物語』所収歌。 ●韻律 字数は四句8音…

雉子焙かれつつ昇天のはねひらく 神無き母に二まいのてのひら/塚本邦雄

雉子焙かれつつ昇天のはねひらく 神無き母に二まいのてのひら きじやかれ/つつ しょうてんの/はねひらく/かみなきははに/にまいのてのひら 塚本邦雄 第四歌集『水銀伝説』収録歌。 上句を見た瞬間、かっこいい、と思ったのですが、下句が難解で、ぶっち…

暴動鹽のごとくあたらし剛毛のツェッツェ蠅棲む國の處女に/塚本邦雄

ぼうどうしおの/ごとくあたらし/ごうもうの/つぇっつぇばえすむ/くにのおとめに 塚本邦雄 理由は忘れたけど何年もまえ、図書館で『現代短歌体系』(三一書房)七巻を手にとった。小学生のころ、親父の蔵書の『全集 現代文学の発見』の『言語空間の探検』…

我が父塚本邦雄/塚本青史

『塚本邦雄の青春』(楠見朋彦,ウェッジ文庫,2009)と並び、興味深い資料がまた一つ。 ご子息にして歴史小説家である塚本青史氏による塚本邦雄の評伝。 硬質な文体で塚本邦雄との生活を描いている。 読みどころは、全部。しかしあえて一つとなれば、やはりア…

少女千草眩暈きざす藥種店うすくらがりに百のひきだし/塚本邦雄

しょうじょちぐさ/げんうんきざす/やくしゅてん/うすくらがりに/ひゃくのひきだし 塚本邦雄 塚本邦雄の歌には、あまり謎とか多義性といったものがない、と思う。 塚本の第一技法は名詞の衝突にあり、だから使われている名詞さえ正しく理解すれば、それが…

満月は熟れつつ 賜へわが領に鳥目繪の斑の吐噶喇列島

満月は熟れつつ 賜へわが領に鳥目繪の斑の吐噶喇列島 塚本邦雄 第八歌集『蒼鬱境』 まんげつは/うれつつ たまえ/わがりょうに/とりめえの ふの/とかられっとう 『蒼鬱境』は塚本邦雄の著作の中でも最大のレア本で、オリジナルは限定20部の肉筆私家版。稀…