聴いて、あまりの衝撃に記事を書かないではいられなかった Ash Ra Tempel アシュ・ラ・テンペル『Starring Rosi スターリング・ロジ』(1973)。
アシュ・ラ・テンペルは、いわゆるドイツのプログレッシブ・ロックのバンド(といかマニュエル・ゲッチングのソロプロジェクト)で、"E2-E4"は後のクラブミュージックのご先祖的なレコードとなりました。
しかしこの『スターリング・ロジ』、相当キテレツで、これはプログレにありがちな「コンセプト・アルバム」なんですが、アルバムのテーマが、
「俺には、彼女がいる」。
ある意味、セルジュ・ゲンスブールと同じテーマと言えなくもないのですが…
ジャケットの可愛らしい女性がロジさんで、当時のゲッチングさんの恋人です。
中ジャケは、スタジオで仲良く楽器を合奏する二人。
裏ジャケは、仲良く砂浜に座ってる二人。ロジさんの隣にはなんか手作りのサンドイッチとかが入ってそうな、バスケットがあります。
こうしたジャケット写真から、二人の仲の良さは我々に、大変よく伝わってきます。
ただし、なんか二人の距離が異様に離れてる点、写真の構図が悪くて、砂浜というより荒涼とした砂漠で遭難した人に見える点に、溜飲が下がる思いです。
基本的にはどれも、ロックっぽかったりフォークっぽかったりサイケ風だったりするゆるいジャムに、ロジさんの可愛らしいボイスがかぶさる、という曲で、一貫して、脱力してます。取りあえず、仲の良さは音楽からも、伝わってきます。
マジメな話、楽器の音色が柔らかいし、音楽が割とミニマルなので、全編を通して繰り返されるリア充アピールに憤りを感じない人であれば、和める一枚になってます。
眠る前などに聴くのも、いいかもしれません。
なんだか、おなじ70年代に、「現代社会の狂気を批判する、コンセプト・アルバム」とか、そういうとても大事なテーマをもったロック・レコードを、陰気なスタジオでマジメに作ってた人たちが、なんだか、すごくかわいそうです。
おすすめは、ビートがファンク化したタンゴで、コードはブルース進行、というトチ狂ったトラックに載せて、ロジさんが「Ready Staedy Go !」「Far Out !」とか呟いてるだけの珍品"Cosmic Tango"。恋とは狂気なのか… 演奏時間が2分しかないのが惜しい。