タパヌリ熱

"What do you know, pray, of Tapanuli fever?" said Sherlock Holmes. 音楽や本など、嘘や発見を書くブログ。旧ブログ http://ameblo.jp/baritsu/

スバルしずかに梢を渡りつつありと、はろばろと美し古典力学 /永田和宏

スバルしずかに梢を渡りつつありと、はろばろと美し古典力学

永田和宏

『黄金分割』(1977)所収。

 

この歌の韻律。

すばるしずかに/こずえをわたり/つつありと/はろばろとはし/こてんりきがく

「美し」で「はし」と読めば、初句七・定型。

 

ただし岡井隆は四句を『新・百人一首』(文春新書,2013)で「はろばろとうつくし」と読んでいる。

 

すばるしずかに/こずえをわたり/つつありと/はろばろとうつくし/こてんりきがく

 

ルビがないから「うつくし」が自然だと思う。すると四句九音、やや過剰な字余り。

音読するとしたら、「はろばろとうつくし」はどういうリズムで読むか、難しい。

しかし何故かこの歌の韻律は不自然な感じがしない。初句七と九字句がリズム的に照応して、なんだか天体の質量やその運行の静謐さを感じさせる。

 

記紀歌謡や長歌も含めて考えると、五音/七音ユニットに限らず、「三」もあれば、「四」もある。七音句はたいてい三と四に分割可能だし。それが休符込み(生み字)で二の倍数の拍に配分されてシンコペーションする。

 

一首を三、四、五で分割すると、

スバルしずかに梢を渡りつつありと、はろばろと美し古典力学

すばる/しずかに/こずえを/わたり/つつありと // はろばろと/うつくし/こてん/りきがく

4/3/3/4/5 // 5/4/3/4

なんだか不思議な法則が見えてくるような。

「つつありと」の後、「うつくし」の後に、釈迢空的なマルが打たれる感じ。

 

架空の古代歌謡みたいな感じがする。