スバルしずかに梢を渡りつつありと、はろばろと美し古典力学
『黄金分割』(1977)所収。
この歌の韻律。
すばるしずかに/こずえをわたり/つつありと/はろばろとはし/こてんりきがく
「美し」で「はし」と読めば、初句七・定型。
ただし岡井隆は四句を『新・百人一首』(文春新書,2013)で「はろばろとうつくし」と読んでいる。
すばるしずかに/こずえをわたり/つつありと/はろばろとうつくし/こてんりきがく
ルビがないから「うつくし」が自然だと思う。すると四句九音、やや過剰な字余り。
音読するとしたら、「はろばろとうつくし」はどういうリズムで読むか、難しい。
しかし何故かこの歌の韻律は不自然な感じがしない。初句七と九字句がリズム的に照応して、なんだか天体の質量やその運行の静謐さを感じさせる。
記紀歌謡や長歌も含めて考えると、五音/七音ユニットに限らず、「三」もあれば、「四」もある。七音句はたいてい三と四に分割可能だし。それが休符込み(生み字)で二の倍数の拍に配分されてシンコペーションする。
一首を三、四、五で分割すると、
スバルしずかに梢を渡りつつありと、はろばろと美し古典力学
すばる/しずかに/こずえを/わたり/つつありと // はろばろと/うつくし/こてん/りきがく
4/3/3/4/5 // 5/4/3/4
なんだか不思議な法則が見えてくるような。
「つつありと」の後、「うつくし」の後に、釈迢空的なマルが打たれる感じ。
架空の古代歌謡みたいな感じがする。