下手くそな演奏や、演奏ミスというのが、すごく好き。
真剣にやったけど、上手くいかなかった、というのが好きなので、上手い人が、わざと滅茶苦茶にやってる演奏というのは、あまりおもしろくない。
「上手い」音楽といっても、必ずしもその音楽家の限界ぎりぎりの演奏をしてるとは限らず、大抵はどっちかといえば、80%の力で演奏してるわけです。
毎日限界ギリギリの演奏をしてたら、燃え尽きてしまうので、聴衆として音楽家にそんな要求をするわけにもいかない。
だから、真剣にやったが、ヘタだから、上手くいかなかった、という事態は、ある意味で、すごく美しいと思う。限界に挑戦している、という意味で。(まあ、その限界は、別の視点から見れば、ものすご〜く、低い、としても…)
また、失敗というのは、一回的なものでもある。何かの再現ではない、一回限りの出来事、というのも、また美しいと思う。
そういうことで、ヘタクソで、泣ける音楽いくつか。
Portsmouth Sinfonia : "Also sprach Zarathustra" - YouTube
『ツァラトゥストラかく語りき』が、ひどいことになっているのですが、ふざけているわけではなく、1970年に、ギャヴィン・ブライアーズが全く音楽の素養がない美大生に結成させたオーケストラ。真剣にやってるのに、名曲が解体され、未知の音響に変貌してしまう。すごく美しいと思う。
■レジェンダリー・スターダスト・カウボーイ
Legendary Stardust Cowboy / Kiss and Run - YouTube
60年代の狂ったロカビリーの人で、"paralyzed"が有名ですが、あれは普通に(?)かっこいいので、こっち。
官僚的なストリング・アレンジに対し「音楽ってのは、正しい音程とか、そういうことじゃない!」と叱咤するかの、ソウルフルなボーカル。
シンセで弾いてるような歌だらけのJ-POPに欠けているものが、ここにある。
まあ音痴なだけなんですが。
■ザ・シャッグス
The Shaggs - Yesterday Once More - YouTube
楽器演奏も作曲も、音楽のことを何一つ知らない少女たちが曲を書いて演奏してしまうバンド。"My pal foot foot"など、完全に音楽理論を逸脱したものではなく、あえて、(彼女達の作品の中では)まともで可愛らしいカーペンターズのカバーを。
よく聴くとベースラインがまるでデタラメなところが、深い。
■エリカ・ポメランス
Erica Pomerance - You Used to Think (1968) - YouTube
60年代のシンガーソングライターのE.S.P.Disk作品のタイトルトラック。
アコギとドラムによるブルージーなロックですが、奇跡的な演奏。
ビーフハート的な、異様に細分化され不安定に揺らぐビート。ドラムとギターと歌が全然合ってないのに、止まらないのがすごい。ポリリズムと単なるデタラメの中間地点にある、何か。たぶんラリって演奏してるだけだと思いますが。エリカさんはその後映像作家として活躍されているようです。
■ザ・ラングレー・スクール・ミュージック・プロジェクト
The Langley Schools Music Project - Desperado (Official) - YouTube
これはヘタというより、むしろめちゃくちゃ上手いのですが、1970年代にカナダの小学校の音楽の先生と生徒による音楽プロジェクトから、イーグルスのカバー。
メソメソした原曲から真の抒情を引き出している。泣いちゃいます。