現代歌人文庫『中井英夫短歌論集』(福島泰樹編, 2001, 国文社)を読んで心に残った部分。
「塚本でも葛原でも、その後の中城ふみ子でも、編集者としてその登場に希ったのは、前衛派の臺頭(たいとう)だの反写実だのということではない。文学はもう少しダメな魂の産物だという、最初からの約束事を確かにしておきたいだけといってもよい。」
「実際、茂吉とか空穂とかの、比類のない叡智の前では(そして彼らがあの輝かしい青春文学の旗手であっただけに)、現代の青春などはたちまちみじめに変色し、若さゆえの試みはすべて無駄に思われても当然であろう。だが、そこに無暴な反逆を試みる以外に文学の発展はありえない。」
(『無用者のうた』)