『塚本邦雄の青春』(楠見朋彦,ウェッジ文庫,2009)と並び、興味深い資料がまた一つ。
ご子息にして歴史小説家である塚本青史氏による塚本邦雄の評伝。
硬質な文体で塚本邦雄との生活を描いている。
読みどころは、全部。しかしあえて一つとなれば、やはりアレ。
忍法夙流変移抜刀霞斬り 眼疾のはてにわが死はあらむ
にんぽうしゅくりゅう/へんいばっとう/かすみぎり/がんしつのはてに/わがしはあらむ
さすが塚本邦雄、
電流を絶たれ、はじめてみづからの声なき唄うたふ電気ギター(日本人霊歌)
と、ジミ・ヘンドリクスがモンタレーでギターを燃やす10年くらい前に歌うだけのことはある、と。白土三平『カムイ伝』、「忍法夙流変移抜刀霞斬り にんぽふしゆくりうへんいばつたうかすみぎり」を見逃さない、と思うわけです。
…まあ下の句はわりと取って付けたような感じだが、でもなんとなく、眼疾の果ての死は『カムイ外伝』っぽいからOK。
ということはさておき、いや塚本邦雄、ぜったいにマンガとか嫌いそうなのに、誰が『ガロ』を教えたのか? という積年の謎。その答え、この本に。あの人だった。
でも自分でマンガを買うなんて沽券に関わる、と思ったのか青史氏に買ってきてと頼むところがカワイイ。